YORKIE COFFEE

YORKIE COFFEE

再生テープを使ったハンドメイドバッグを販売するライフスタイル雑貨店「MEKEARISA」の姉妹店で、オーナー夫婦が新たな事業展開として試みるカフェのプロジェクトである。
YORKIE COFFEEのコンセプトは「ペットを連れている人々も受け入れる、動物にも優しいCAFE」であり、地域に対して開放的な空間にすることが求められた。

このお店の舞台として選ばれたのは、「京街道枚方宿」という、かつて宿場町として栄えたエリアに位置する築50年ほどの平家であった。今もなお歴史街道として保存されている通りの入口に建つ建物で、南側が街道に、東側は公道をはさんで大きな商業施設に面していた。この状況から、建物を改装するにあたり、歴史の継承と街の活性化の双方に対して応える必要があるように思えた。
建築の歴史を継承する上で大事なことは、格子や下見板張りなどの物質的要素を真似て「和風」に仕上げるということよりも、宿場町として賑わった頃のように、町民がふらっと立ち寄れる、親しみやすい建築物になることであると考えた。オーナー夫婦の要望である「開放的なCAFÉ」とも相まって、この建物と街の関係性を近づける方法に焦点を当てて設計を進めることにした。

オーナー夫婦は誰に対しても気さくに接し、些細な事柄にも幸せと喜びを見出すことができる感度の高い人たちである。いつも可愛い雑貨や植物に囲まれており、周囲には日々の暮らしに対して細やかな気配りができるスタッフやお客さんたちが集まっているのが印象的であった。
そんなオーナー夫婦と話をしているうちに、二人の魅力そのものを街に伝えることができれば、自然と人々が集まる建物になり、活気のあった宿場町を彷彿とさせる風景を生み出せるのではないかと考えた。
そこで、建材で空間をデザインするというよりも、二人のセンスで並べられる商品や食器、集まる人たちの服装、楽しそうな表情や会話までもが設えの一部となって溶け込み、それらが揃って初めて完成するような空間づくりを目指すことにした。

空間構成としては、既存建築を街の人々を受け入れる外側のハコとして捉え、その内側に、オーナー夫婦の人柄を伝えるためのハコを挿入して入れ子状とした。
外側のハコ(=既存建築)は構造上必要な壁を残してできる限り開口部を増やし、店内の様子を街の人々に伝えやすい状況をつくった。さらに窓の水平ラインを南面から東面まで一繋ぎに通すことで、建物が歴史街道と市街地を繋ぐ佇まいとなることにも配慮した。
また、店内には窓際に沿ってベンチを設け、窓を開放した際に外からも座れる場所をつくっている。その結果、人々が気軽に立ち寄りやすい建物になると同時に、そこに座る人たち自身がファサードの一部となって、街と店を繋ぐ存在になってくれるのではないかと考えている。
内側のハコは厨房やレストルームなどのコアスペースを囲っており、オーナー夫婦が気の赴くままに商品や雑貨をディスプレイできる展示スペースになっている。色とりどりのMEKEARIバッグやこだわりのグッズ、食器、植物などが並び、日によって表情を変えるこの壁は、お店の魅力を街の人々に伝える看板の役目も果たしている。

今回の計画では、オーナー夫婦とその周りに集まるヒト、モノ、コトを対等に扱い、全てを空間の要素として捉えることで、このお店が纏う空気そのものを街に伝えようと試みた。
オーナー夫婦が楽しみながらお店づくりを続けていくことで、常に変化する飽きないお店となって地域の人々に長く愛されることを願っている。

[概要]

用途:飲食店(カフェ)

立地:大阪府枚方市

床面積:72.5㎡

施工:株式会社テン・プランニング

家具工事:株式会社丸萬

協力:sakishiraz 

写真:竹村麻紀子

 

[spec]

use : restaurant(café)

location : Hirakata-shi,Osaka

floor area : 72.5㎡

contructor : ten planning Co.,Ltd.

furniture : MARUMAN Co.,Ltd.

support : sakishiraz

photo : Makiko Takemura

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