ilo hair salon
ilo hair salon
Concept
京都・烏丸御池に位置する京町家のリノベーションプロジェクト。
築80年以上の歴史をもち、個別指定京町家に登録された建物を美容室として再生した。
改修にあたっては、施主が掲げた「一人ひとりのお客様にしっかり向き合い、家のようにくつろげる場を提供する」という理念を軸に、京町家の歴史的価値を尊重しつつ、伝統と現代的なデザイン要素を融合させる方法を模索した。
既存の建物は細長い土間・台所に隣接して3つの部屋が間続きに配置され、奥に小さな庭を備える典型的な京町家の間取りであった。
本計画では景観を尊重してファサードにはほとんど手を加えず、既存の間取りを生かして日本家屋の趣を可能な限り保つことに努めた。
一方で、内装には店名「ilo」に込められた「喜び」と「色」の二重の意味を反映し、色彩をアクセントとして取り入れた。
間仕切り壁や床など「建築」としての要素はナチュラルな素材や色を基調として既存建築と馴染ませ、家具や照明など「物」としての要素には人工的な素材と遊び心のある色味を加えて新旧のコントラストを際立たせている。
エントランスは、改築により失われていた通り土間を復原し、奥庭へと続く待合スペースを設けた。霞(かすみ)文様をモチーフにした色彩豊かな棚を壁面に設え、物販スペースやベンチとして活用している。
1階中央にはレセプションを配置し、その上部を小屋裏まで続くダイナミックな吹抜け空間とした。
この吹抜けは開放的な印象を与えると同時に、暗くなりがちな中央部に2階からの光を取り込み、空間全体に均一な明るさをもたらしている。吹抜け部分には施主と共同制作したカラフルな巨大照明を吊るし、店舗のシンボルとして目を引く存在とさせた。
また、手すりの格子下端を既存鴨居の高さに揃え、日本建築のモジュールを視覚的に残すことで、伝統的なスケール感を強調している。
レセプションの両側にはカットスペースとシャンプースペースを計画した。
通り土間から40cmほどの高床を残し、天井高を抑えることで、日本家屋特有の落ち着きと親しみやすさを感じられる空間となるよう配慮した。カットスペースは照明と花器を華やかに彩ることで会話を楽しむ空間を演出し、シャンプースペースは色彩を抑え、奥庭と連続する趣のある雰囲気で、リラックス効果を高める空間とした。
2階は吹抜けを挟んでスタッフルームとフリースペースを計画した。フリースペースはキッズルームや貸しサロンなど様々なアクティビティを受け入れる柔軟な空間として地域に開放される。
本計画では、「建築」と「物」としての要素を明確に区別し、それぞれの個性を引き立てながら相互に共存させるバランスを図った。
京町家の伝統的な趣と現代の感性を融合させ、訪れる人々に新しい「喜び」と「くつろぎ」を提供する空間を目指した。
[概要]
用途:美容室
立地:京都市中京区
床面積:1F – 67.02㎡
2F – 56.26㎡
Total – 123.28㎡
施工:株式会社KOUEI
協力:sakishiraz
写真:竹村麻紀子
[spec]
use : hair salon
location : Nakagyoku, Kyoto
floor area : 1F – 67.02㎡
2F – 56.26㎡
Total – 123.28㎡
contructor : ten planning Co.,Ltd.
furniture : KOUEI.co.,Ltd.
support : sakishiraz
photo : Makiko Takemura